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2023年08月01日号 (第476)

タワーマンションの評価が変わる?

 みなさん、こんにちは。暑い日が続いています。やっと梅雨が明けたそうですが、梅雨明け前から連日猛暑日となっており、厳しい夏という感じです。

 さて、今回はタワーマンションの評価方法が変わるというお話です。

問題の所在

 タワーマンションを利用した節税策について問題になっていますが、評価額と実勢価額に大きな乖離があることが原因になっていました。令和4年の最高裁判決の事例は、10億円の融資を受け、14億円弱でタワーマンションを購入、相続税の評価額3.3億円と計算された事案についての争いです。

 納税者は、財産評価基本通達に従って評価をしているので、普通であれば問題にならないはずです。ところが最高裁の事例では、14億円弱で購入した物件の評価が3.3億円ということで、乖離が大きかった為問題になりました。

 財産評価通達は、すべての財産について鑑定評価を行うことは困難で、多少の誤差は無視しても画一的な評価方法を定めることが課税の公平に資する、という考え方によるものです。なお、評価通達では「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」という取扱いになっており、今回は著しく不適当と判断したことで、更正処分を行ったことがきっかけでした。

 訴訟の細かな論点は置いておいて「14億円で購入した物件が3.3億円で評価されていることが正しいのか否か」というのが多くの人の関心です。

評価方法の改正

 令和5年度税制改正大綱でタワマン節税の判決等の影響を受け、下記の記載がありました。

(5)マンションの相続税評価についてマンションについては、市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離しているケースが見られる。現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある。このため、相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。

 国税庁の6月30日付の報道発表資料によれば、6月22日「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」が行われ、下記のような計算式により評価する方向のようです。

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023006-018.pdf

現行の相続税評価額×そのマンション一室の評価乖離率×最低評価水準0.6(定数)

 細かく読んでいくと、そのマンション一室の評価乖離率を、エクセルなどを利用して具体的な数字を当てはめれば計算できるようになっています。マスコミや税理士などが具体的な数字を当てはめて計算している例では、タワーマンションの場合、1.5倍から2倍前後に評価額が上昇する結果になりそうです。ちなみにタワーマンション以外の場合も、現行よりは評価が高く計算される傾向があるようです。

 

 実際に通達が改正され適用になるのは来年以降ですが、最高裁の事例を考慮すると、タワーマンションの場合、現行の評価通達を利用して申告をしても、否認リスクが存在してしまいます。タワーマンションを所有していて相続があった場合、評価通達通りに計算しても不安が残るのは実務家泣かせと言えます。その意味では、上記計算式に当てはめて計算した額で評価を行った場合、改正前でもその評価額を妥当なものとして扱うなど、実務がやりやすい形で動いてくれることが望まれます。

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